Research
私たちの研究は、孤独を「主観的で、他者との関係の中で生じる経験」として捉え、それが社会的アイデンティティによってどのように形づくられるのかを明らかにすることを目的としています。社会的アイデンティティ理論に基づき、エスノグラフィー、インタビュー、質問紙調査、オンラインデータ収集など、複数の研究手法を組み合わせて、現実社会の文脈において、集団アイデンティティが帰属意識、意味づけ、社会的承認の形成にどのように寄与しているのかを検討しています。
特に、地域コミュニティと密接に協働し、地域に根ざしたアイデンティティが、日常生活におけるつながり、孤立、孤独をどのように形づくっているのかを明らかにしています。
また私たちは、コミュニティや心理学的アプローチに加え、最先端の社会神経科学も取り入れています。「リアルワールド・パラダイム」と呼ばれる手法を用い、自然な社会的相互作用とfMRIなどの脳画像法を組み合わせることで、社会的アイデンティティ、孤独、対人関係のつながりが脳内でどのように表現されているのかを調べており、これまでの研究から、集団は孤独の経験とその軽減の両方において中心的な役割を果たすことが下記のように示されています。
- 集団への帰属意識は対人関係への期待を形づくり、大切に思える集団と強く同一化することは孤独の予防につながる。
- アイデンティティの喪失や断絶は、孤独に対する脆弱性を高める。
- 集団に基づく排除や周縁化は、人生のさまざまな場面で孤独を深刻化させる。
- 各集団の特性やニーズに合わせて設計された集団ベースの介入は、孤独の軽減に有効である。
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あわせて下記の研究では、さまざまな社会集団における孤独の経験と、孤独軽減の有効性を調査する一連の関連研究プログラムを通じて実施しています。
- REConnectED プログラム(摂食障害への社会的つながりによる支援)
(253千ポンド、英国医学研究会議[MRC])
2026年3月~2027年8月
研究代表者(PI):ニアム・マクナマラ
共同研究者(CoI):クリフォード・スティーブンソン、ダン・フリングス
REConnectEDは、摂食障害の治療を終えた成人を対象とするオンラインのピアサポート型グループ介入です。再発リスクが高く、心理社会的支援が不足しがちな退院直後の時期に焦点を当てています。
「健康のための社会的アイデンティティ・アプローチ」に基づき、参加者が社会的つながりを再構築し、回復を支えるアイデンティティを強化し、孤独を軽減できるよう支援します。
MRC(Medical Research Council)の助成による18か月間の実現可能性研究では、イングランドおよびアイルランドにおけるNHSおよびボランタリーセクターの現場での実施を検証し、参加者募集、継続率、受容性、実装可能性を評価する。得られた知見は、今後の本格的研究開発のリスク低減に資するとともに、ケア経路への拡張可能なピア提供型支援の統合を支える決定的評価研究へとつなげることを目的とする。 - 互助・共助に根ざしたコミュニティー・シェッドの社会実装と孤独・孤立予防メカニズムの解明
(1,000万円、東北大学 SOKAP-Connect プロジェクト)
2026年2月~2029年3月
研究代表者(PI):伊藤 文人 講師; 東北大学の共同研究者(CIs):Clifford Stevenson国際卓越教授、麦倉 俊司 教授、元木 正和 准教授、久保 沙織 准教授、大西 竜太 特任助教
コミュニティー・シェッドは、高齢者が主体となって自律的に運営する居場所であり、木工、園芸など本人たちが望む活動を自由に行うことができる。オーストラリアを起源とし、現在では世界で3,500以上のシェッドと10万人以上の参加者へと拡大しており、アイデンティティに基づく革新的な孤独・孤立予防のアプローチとして国際的な注目を集めている。英国やオーストラリアなどでは、その有益性がますます認識されているが、日本における展開は依然として初期段階にある。このSOKAP-Connectプロジェクトは、互助・共助に根ざしたコミュニティー・シェッドの社会実装を目指し、シェッド参加が孤独および社会的孤立の軽減に与える効果を評価し、コミュニティー・シェッドの国際的普及に向けた文化横断的エビデンス基盤の構築のための国際的な研究連携を強化することを目的とする。 - コミュニティ基盤型孤独・社会的孤立予防 国際研究拠点
(2,000万円、日本学術振興会・国際共同研究加速基金[国際共同研究])
2024年9月~2029年3月
研究代表者(PI):伊藤文人
共同研究者(CI):クリフォード・スティーブンソン、五十嵐祐、梶村昇吾、日道俊之、高島理沙
Community Shedsは、高齢者が自主的に運営する地域の交流拠点であり、孤独や社会的孤立の予防に向けた革新的な取り組みとして国際的に注目されています。英国やオーストラリアでは効果がはっきりと認識されつつありますが、こうした効果を生み出す基盤的メカニズムは十分に解明されていません。
本プロジェクトは国際的・学際的チームを集結し、
(a) 孤独・孤立に対する理解に基づくエビデンスを深化させ、
(b) Community Sheds がどのようにポジティブな効果を生み出すのかを解明し、
(c) 社会的アイデンティティに基づく予防アプローチを発展させることを目的としています。 - 高齢者コミュニティ比較研究のための国際データベース構築
(400万円、日本学術振興会・二国間交流事業)
2024年4月~2026年3月
研究代表者(PI):伊藤文人
共同研究者(CI):S.アレクサンダー・ハスラム、キャサリン・ハスラム、キム・ウォルダー、五十嵐祐、日道俊之、高島理沙
本研究は、日本とオーストラリアのコミュニティー・シェッドに関する量的・質的データを統合した、安全性の高い国際横断データベースを構築することを目的とする。コミュニティー・シェッドは高齢者が自律的に運営する自己組織型の地域空間であり、孤独の軽減やウェルビーイング向上に資する可能性が示されているが、その効果が文化的文脈によってどのように異なるのかは十分に明らかになっていない。本プロジェクトでは、量的・質的データを共有する基盤を整備することで日豪の研究者を結集し、
(a) 高齢者コミュニティの厳密な異文化比較を可能にし、
(b) 社会的つながりが健康を促進するメカニズムを特定し、
(c) 地域に根ざした健康的加齢アプローチに関する国際研究コンソーシアムの基盤を構築する。 - ヘルシンキ、北サヴォニア、北カレリアにおける移民母親の異民族間友情形成促進プログラムの開発
(25万ユーロ、コネ財団)
2024年1月~2027年12月
研究代表者(PI):エーリカ・フィネル
共同研究者(CI):クリフォード・スティーブンソン、ケヴィン・ダレイム
FriendMUMは、フィンランド在住の移民母親を対象とした友人形成支援介入について、独自のマルチメソッド縦断分析を行うことで社会心理学理論の発展を目指す。高度な量的・質的縦断的ダイアディック手法を用い、母親同士の相互的な異民族間接触がどのように異民族間友情へと発展するのか、友情形成を促進・阻害する要因は何か、そして本取り組みが参加者の孤独をどのように軽減するのかを検証する。 - 社会的孤立・孤独予防のためのシチズンサポートプロジェクト
(9,000万円、JST-RISTEX「社会的孤立・孤独の予防と多様な社会的ネットワークの構築」)
2022年10月~2027年3月
研究代表者(PI):伊藤文人
共同研究者(CI):東登志夫、松尾崇史、高島理沙、五十嵐祐、日道俊之博士、豊島彩
本プロジェクト(通称「市民支援プロジェクト」)は、(a)コミュニティ(男性/女性)シェッドを設立し、(b)社会的孤立リスクを容易に可視化するツール(オンライン社会的アイデンティティ・マッピング)を開発することで、コミュニティ・シェッドの孤独・社会的孤立軽減効果を検証するものである。コミュニティ・シェッドは、地域住民やその友人が設立・運営し、木工、園芸、談話などの活動を行う場である。海外では一般に「メンズ・シェッド」と呼ばれ、オーストラリアに起源を持つ。世界には3,700以上のシェッドと10万人以上の参加者(シェッダー)が存在する。
本プロジェクトでは、熊本県水上村に「寄郎屋(Yo-Ro-Ya)」および「暖男舎(Dan-Dan-Ya)」、北海道札幌市に「ポッケコタン(Pokke-Kotan)」の3つのコミュニティー・シェッドを設置し、心理・脳・健康に関する調査および実験を通じて、コミュニティー・シェッドが孤独・社会的孤立の一次予防として有効に機能するかを検証する。本研究を通じて、日本の成人に適したコミュニティー・シェッドのビジョンを提示し、孤独・社会的孤立の一次予防システムの構築を目指す。 - Inspiring Ashfieldの拡張:Mid-Notts統合ケア連携圏における地域基盤型ソーシャル・プレスクリプションの展開
(18万ポンド、英国芸術・人文研究会議[AHRC])
2022年2月~2023年2月
研究代表者(PI):クリフォード・スティーブンソン
共同研究者(CI):ドナ・チャンピオン、ディ・ベイリー、バーバラ・マシューズ
本研究は、COVID-19後の社会的に困難な地域におけるInspiring Ashfieldのソーシャル・プレスクリプション介入の基盤的メカニズムを明らかにすることを目的とした。マルチメソッド研究により、地域アイデンティティおよび複数の集団所属が対象地域における孤独軽減にどのように寄与するか、また介入がこれらのプロセスをどのように強化するかを示した。 - ノッティンガムシャーにおける孤独対策
(2万6千ポンド、ノッティンガムシャー州議会)
2021年9月~2022年3月
研究代表者(PI):マイリ・ボウ博士
共同研究者(CI):クリフォード・スティーブンソン、ジュリエット・ウェイクフィールド、ブレリナ・ケレジ
NTUの「集団・アイデンティティ・健康」研究グループは、COVID-19下におけるノッティンガムシャー全域の孤独の有病率調査および地域の孤独軽減サービスに関する調査を実施した。本研究は州議会の孤独対策戦略に貢献し、Nottingham/shire Tackling Loneliness Collaborativeの設立につながった。 - SERVICE:COVID-19緊急事態の影響を受けた脆弱層のための社会的・情動的レジリエンス
(49万6千ポンド、UKRI)
2020年8月~2022年3月
研究代表者(PI):ブレイン・プライス
共同研究者(CI):クリフォード・スティーブンソン、マーク・レヴィーン、アヴェリー・スチュアート、ドミトリ・カッツ、モハメド・ベナサー、ダニエル・グーチ
社会心理学者と計算機科学者による学際的共同研究であり、COVID-19下で孤立・孤独を経験する高齢者向けの孤独軽減アプリの開発を目的とした。都市部および農村部の高齢者への詳細なインタビューやユーザビリティ調査を実施し、その知見をアプリ開発に反映した。完成後は、地域で暮らす高齢者の社会的レジリエンスと精神的ウェルビーイングを支援し、介護者がより効果的に支援できるようにすることを目指す。 - 救急サービス職員の退職移行の理解:社会的アイデンティティ・アプローチ
(4万ポンド、Fire Fighters Charity)
2019年1月~2020年12月
研究代表者(PI):ニアム・マクナマラ
共同研究者(CI):クリフォード・スティーブンソン、ロウェナ・ヒル、キャサリン・ハスラム、ニクラス・ステフェンス、サラ・ベントリー
NTUとクイーンズランド大学の共同研究であり、消防士が退職へ移行する際に直面する特有の課題を検討した。退職消防士への詳細なインタビューおよび大規模調査の結果、職務上の要求が退職後の強い社会的孤立や職務関連トラウマへの対処困難につながっていることが示された。特別設計のオンライン介入は、本集団におけるウェルビーイングおよび社会的計画性の向上に一定の有効性を示した。











